ここ数年、地域活性化・地方創生を考える上で「関係人口」という考え方が注目されています。総務省の定義によれば、「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々を指す言葉です。
地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面していますが、地域によっては若者を中心に、変化を生み出す人材が地域に入り始めており、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が地域づくりの担い手となることが期待されています。
この記事では関係人口を創出・拡大する施策の類型および各自治体が実施した事例を紹介します。
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目次
関係人口とは
平成 28 年、総務省に設置された「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」において、地方圏が、地域づくりの担い手の育成・確保という課題に直面していること、また、国民各層が居住地以外の地域と関わる機会が多様化していることに鑑み、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる者である「関係人口」に着目した施策に取り組むことの重要性が議論されました。以降、さまざまな地方公共団体が関係人口を創出・拡大するための取り組みをしています。
引用:『総務省「関係人口とは」』
関係人口創出・拡大の類型
関係人口創出・拡大の施策は以下の類型があります。
地域との関わりを持つ者のうち、その地域にルーツがある者等又はふるさと納税の寄附者に対して、地域と継続的なつながりを持つ機会を提供する取組
その地域にルーツがある者等(過去にその地域での勤務や居住、滞在の経験等を持つ者等を含む。)を対象に、関係人口を募る仕組みを地方公共団体が設け、その取組に賛同する者に対して地域と継続的なつながりを持つ機会を提供する取組
ふるさと納税を行った者(寄附者)は、「ふるさと」等の寄附先団体に一定の関心を持っていると考えられることから、寄附者に対して地域と継続的なつながりを持つ機会を提供する取組
これから地域との関わりを持とうとする者に対し、地域の課題やニーズと、関係人口となる者の想いやスキル・知見等をマッチングするための中間支援機能を形成し、地域と継続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する取組
地方公共団体が都市部等に在住する個人・企業・その他団体(NPO・大学のゼミなど)と連携し、都市住民等の地域への関心を高めるための取組
地方公共団体が地域住民や地域団体と連携し、訪日外国人との交流を促進し地域(地域住民や地場産業)との継続的なつながりを創出するために行う取組
引用:『総務省地域力創造グループ地域政策課「令和元年度「関係人口創出・拡大事業」モデル事業(裾野拡大・裾野拡大(外国人)型)調査報告書」』
関係人口創出・拡大施策の事例3選
このブログでWeb3やDAOのテーマをお話しするときに山古志村を何度も取り上げているので、よく御覧頂いている方にとっては耳タコかもしれませんが関係人口を語るうえで外せないと思い選出しました。
山古志村の人口はわずか約800人程度で高齢化率は55%の限界集落です。村の住民が地域活性化に向けて活路を求めたのはNFTでした。Nishikigoi NFTアートを販売し、これが注目されて山古志村はWeb3.0を活用して地域活性化に取り組む成功事例として広く知られるようになりました。
旧山古志村では現在「山古志DAO」に取り組んでいます。「山古志デジタル村民総選挙」を実施して、山古志地域を存続させるためのアイデアプランを募集します。NFTアートを購入した人にデジタル住民票を発行し、デジタル住民となった人の投票によってどのプランを実行に移すのかを意思決定し、実際にデジタル村民に一部の予算執行権限を付与してプロジェクト化して進めていくというプロジェクトです。このデジタル住民がまさに関係人口であり、山古志DAOが創出・拡大施策であると言えます。
先日Yahoo!ニュースで見かけて、ナニコレ!と思って気になり調べていたらまさに関係人口の施策だったのが、栃木県佐野市が取り組んでいる「佐藤の会」です(笑)
現在全国に200万人いる「佐藤姓」のルーツは、藤原秀郷ゆかりの地佐野市かもしれない、ということで佐野市が「佐藤の会」を立ち上げました。全国に沢山いる苗字に着目したのは脱帽です。佐藤の会では佐野市内名所の観光ツアーなどをやっています。潜在顧客が多く、キャッチーで話題性も十分であり関係人口創出・拡大のためのマーケティング企画・プロモーションの好事例だと思いました。
最後は総務省がまとめた関係人口創出・拡大モデル事業調査報告書から自分が一番興味を持ったものを選出しました。それが徳島県東みよし町の「もっと知って!感じて!東みよし町」という取り組みで、カメラが好きな女子やSNS・ライブ配信の得意な女子を招待してコンテンツを撮影・投稿してもらう企画です。
カメラやSNS投稿が得意な女子を招待して町の情報を投稿してもらうことで口コミ拡散を狙った施策だと思われます。SNSが当たり前の若い世代に向けてプロモーションする施策としては企業がやる分には一般的に普及した手段の1つではありますが、自治体がこういった施策をやるのはまだまだ珍しいのではないでしょうか。
まとめ
以上、関係人口創出・拡大の取り組みを紹介しました。元々著名な地域資源や豊かな自然がある場合はアピールしやすいですが、仮にそういったものがなくても佐野市の佐藤の会に代表されるように知恵1つで面白い取り組みが出来たりするものです。
こういった企画は地域内の方々だけで考えても煮詰まってしまうことも少なくありません。中小企業診断士などの外部専門家なども交えてアイディア出しするのも1つの手段です。関係人口において何かお困りのことがあれば是非中小企業診断協会にご相談ください。もちろん私に直接お問い合わせ頂いても問題ございません。私自身の能力でカバーできなさそうなことはその道の専門家をお繋ぎすることも可能です。