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脱価格競争!ラグジュアリー製品の付加価値の作り方事例5選

ラグジュアリー製品の高付加価値の作り方事例

事業責任者やマーケティング担当の多くの方が商品の競争力で悩むことが多いと思います。とくに競合製品と差別化が難しい場合、価格競争になってしまうことも少なくありません。価格競争をする場合は規模の経済により製品1個あたりのコストを下げることが大切になりますが日本市場は少子高齢化が進み人口減少しているので、どんどんそれも難しくなっています。そのため高付加価値・高利益のラグジュアリー製品を開発することが1つの戦略として重要になってきますが、そのような製品を作ることは簡単ではありません。そこでこの記事ではラグジュアリー製品がどのように付加価値を作っているか事例を研究し、方法論を考えていきたいと思います。

ラグジュアリーブランドの定義

ラグジュアリーとは、「歴史があり」「価格が高く」「高級ブランドであるという、イメージ力の高さ」を兼ね備えているブランドのことです。似たようなブランドにプレミアムというものがあります。

プレミアムとラグジュアリーの違いとしては、プレミアムは説明がつく高価値製品のことを指します。機能や品質など、こういう点が秀でているから、この価格がついている、というものです。

一方、ラグジュアリーは説明がつかない、対象への憧れ、欲求といった感情が想起される製品です。どうしてこういう価格となるのか、品質や、信頼、機能といったものに要素分解できないものです。必ずしも高品質・高機能である必要がないため一旦ブランドを確立できると過度な技術競争や価格競争になりにくいことが特徴です。

事例1 LOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)

ラグジュアリーブランドと聞いて多くの方が思い浮かべるのが「ルイ・ヴィトン」でしょう。ルイ・ヴィトンは以下の歴史を有しています。

ルイ・ヴィトンの歴史

創業
ルイ・ヴィトンは1821年に生まれ、若くしてパリに向かいました。彼はそこで職人として働き始め、自身の技術を磨き、箱作りの職人として評価を得ました。

革新的なデザイン
1854年にルイ・ヴィトンは自身の名前を冠した最初の店をオープンし、画期的な”トランク”(旅行用トラベルケース)を発表しました。これらのトランクは四角く、積み重ねやすく、旅行に適していました。このデザインはその後のスーツケースや旅行バッグの設計に大きな影響を与えました。

ブランドの保護
ルイ・ヴィトンのトランクは非常に人気があり、多くの模倣品が出回りました。これに対抗するため、彼は1867年にブランドのロゴを導入し、その後も独自のパターン、最初はダミエ・キャンバス、次にモノグラム・キャンバスを作り上げ、模倣品から本物を区別する方法を作り出しました。

高級ブランドへの進化
ルイ・ヴィトンの息子ジョルジュ・ヴィトンが事業を引き継ぎ、1901年には最初のハンドバッグである “スティーマーバッグ” を導入しました。さらに、彼の指導の下で、ブランドは高級レザーグッズやアクセサリーに広がり、その高品質と独自のデザインで知名度を上げました。

国際的な展開と成長:
ルイ・ヴィトンはその後、世界中に店舗を拡大しました。1987年には、モエ・ヘネシーと合併し、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)を設立しました。この合併により、ルイ・ヴィトンはその他の高級ブランドとともに、さらにグローバルな規模で成長することが可能となりました。

ルイ・ヴィトンがラグジュアリーブランドである要因

高品質の製品:
ルイ・ヴィトンの製品は、素材選びから製作過程まで非常に高い基準で作られています。職人技による手作りの部分も多く、その品質と耐久性は業界で高く評価されています。

限定性と希少性
ルイ・ヴィトンは品質だけでなく、製品の希少性も大切にしています。一部の製品は限定生産や特定の地域・店舗限定で発売されるため、所有すること自体がステータスとなります。

歴史と伝統
1854年の創業以来、ルイ・ヴィトンは革新的なデザインと技術を続けて発表してきました。その長い歴史とブランドの伝統は、高級感と信頼性を象徴しています。

独特なデザインとブランド認知度:
ルイ・ヴィトンのモノグラムやダミエのデザインは、世界中で非常に認知度が高く、ブランドのシンボルとなっています。

高価格設定
ルイ・ヴィトンの製品は、その品質とブランドイメージを反映した高価格で販売されています。この高価格設定は、ブランドの高級感を強化し、一部の富裕層にしか手が出せないという希少性を高めています。

これらの要素が組み合わさることで、ルイ・ヴィトンはラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。

事例2 CHANEL(シャネル)

シャネルの歴史

シャネルは20世紀初頭にココ・シャネルによって創設され、彼女の革新的な視点とビジョンを通じてブランドは確立されました。以下にその主な過程を説明します。

創業:
1910年、ココ・シャネルはパリのカンボン通り21番地に帽子店を開きました。彼女のデザインは当時の社交界の著名人から注目を集め、シャネルの名前は広く知られるようになりました。

ファッションへの進出
シャネルは女性のドレッシングに革新をもたらしました。彼女は当時の女性服装が厳格すぎると感じ、よりシンプルで快適なデザインを提供しました。これには、ジャージー素材を使用した服や「リトル・ブラック・ドレス」が含まれます。

シャネルNo.5の誕生
シャネルは1921年に香水市場に進出し、シャネルNo.5を発表しました。これは世界初のデザイナーブランドの香水であり、現在も最も認知度の高い香水の1つです。

シャネルスーツの登場:
1950年代には、シャネルはブランドのアイコンとなる「シャネルスーツ」を発表しました。これは女性がビジネスシーンで着用できるエレガントで快適な衣装であり、女性の社会進出を象徴するアイテムとなりました。

ブランドの象徴:
シャネルは2つの「C」を交差させたロゴ、パールやカメリアの花などをブランドの象徴として確立しました。これらのシンボルはシャネルの製品を瞬時に識別できるようにし、ブランドの認知度を高めました。

国際的な展開:
シャネルはその後、国際的に展開し、多くのセレブリティやファッション愛好家から愛されるブランドとなりました。そのエレガントで洗練されたデザインは、世界中の人々に認められ、シャネルはラグジュアリーブランドとしての地位を確立しました。

シャネルがラグジュアリーブランドである要因

シャネルがラグジュアリーブランドと認識されている要因は、以下のような多くの要素によるものです。

優れたクラフトマンシップと品質
シャネルの製品は、最高級の素材を使用し、精巧な技術で作られています。特に、そのハンドバッグや香水、化粧品、そしてハイファッションの服装は一貫して高品質を維持しています。

独自のデザインと革新
シャネルは、そのシンプルでありながら洗練されたデザインと、女性服装に対する革新的なアプローチで知られています。この特徴的なデザインは、ブランドの認知度を高め、ラグジュアリー市場での地位を確立する上で重要な役割を果たしています。

ブランドの歴史と伝統
シャネルは、その創設者であるココ・シャネルの哲学とビジョンに基づいています。彼女の影響力は今日も続いており、ブランドの強さと連続性を保証しています。

高価で排他的な製品
シャネルの製品は高価であり、その排他性がラグジュアリーブランドとしての地位を補強しています。また、シャネルの製品はしばしば限定生産され、これがさらなる希少性と価値を創出しています。

広範で一貫したブランドイメージ
シャネルは、ファッション、香水、化粧品、高級ジュエリーなど、多岐にわたる製品カテゴリーにおいて一貫したブランドイメージを維持しています。それぞれの製品ラインがブランドの全体的なイメージと価値を補強しています。

これらの要素が組み合わさって、シャネルはラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。

事例3 Gucci(グッチ)

グッチの歴史

グッチは、1921年にグッチオ・グッチによって設立されたイタリアの高級ファッションブランドです。以下に、グッチがブランドを確立した主な過程を説明します。

創業と初期の成功
グッチオ・グッチは、フィレンツェで革製品と旅行用品の小さな店を開きました。彼の高品質な製品はすぐに成功を収め、国内外から顧客を引きつけました。

革新的なデザイン
グッチは、馬具からインスピレーションを得たアイテムを作り上げ、その独特なスタイルで認知度を上げました。この影響は、今でもブランドのロゴであるダブルGや馬蹄形金具などのデザインに見られます。

国際的な展開
1950年代と1960年代には、グッチはローマ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドン、パリなどに店舗を展開しました。これにより、グッチは国際的なブランドとしての地位を確立しました。

セレブリティとの関わり
グッチの製品は多くの著名人やセレブリティに愛用され、特にハリウッドのスターたちがグッチを着用することで、ブランドは更に高い評価を得ました。

ブランドの復活
1980年代と1990年代には、内部の対立と経済的な問題によりブランドは苦境に立たされましたが、1990年代後半にトム・フォードがクリエイティブ・ディレクターとして就任し、ブランドの復活に大いに貢献しました。彼のモダンでセクシーなデザインは大いに評価され、グッチは再びファッション業界の最前線に立つこととなりました。

グッチがラグジュアリーブランドである要因

グッチがラグジュアリーブランドと認識されている要因は、以下のような多くの要素によるものです。

高品質と優れたクラフトマンシップ
グッチの製品は、最高級の素材を使用し、熟練した職人技で作られています。これにより、ブランドはその品質と耐久性で高い評価を得ています。

独自のデザイン
グッチはその独特で時折挑戦的なデザインで知られています。そのアイコニックなダブルGロゴや緑と赤のウェビングストライプは、ブランドの即時認識を可能にしています。

ブランドの歴史と遺産
グッチは1921年の創設以来、高級ファッションの象徴となっています。その長い歴史とイタリアの遺産は、ブランドのラグジュアリー性を強化しています。

セレブリティとの関連
グッチは多くの有名人やセレブリティに愛用されており、そのブランドイメージを高めています。映画スターや音楽アーティストがグッチのアイテムを着用することで、ブランドは高級感とステータスシンボルとしての地位を確立しています。

高価格と排他性
グッチの製品は一般的に高価であり、その排他性がラグジュアリーブランドとしての地位を補強しています。また、限定エディションの製品やカスタムメイドのオプションを提供することで、ブランドはさらなる価値と希少性を提供しています。

これらの要素が組み合わさって、グッチはラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。

事例4 PORSCHE(ポルシェ

ポルシェの歴史

ポルシェは、1931年にフェルディナント・ポルシェによって設立されたドイツの高級自動車メーカーです。以下に、ポルシェがブランドを確立した主な過程を説明します。

創設と初期の革新
フェルディナント・ポルシェはエンジニアとして評価されており、その技術的な革新がブランドの基盤となりました。彼は電気自動車とハイブリッド車の初期の開発に関与し、その後、フォルクスワーゲン・ビートルの設計にも関与しました。

ポルシェ911の登場
ポルシェのブランドイメージを最も象徴するモデルは、1964年に初めて公開された911です。その美しいデザインと優れたパフォーマンスは、自動車愛好家から高い評価を得て、ポルシェの地位を固めました。

モータースポーツへの参加
ポルシェはレーシングカーの開発とモータースポーツへの積極的な参加で名声を高めました。同社はル・マン24時間レースを含む数多くの重要なレースで勝利を収め、その技術的な優れさと性能を証明しました。

高品質と耐久性
ポルシェの車は、その高品質と耐久性で知られています。これはブランドの信頼性を強化し、顧客のロイヤリティを確保するのに役立ちました。

ラグジュアリー市場への定位
ポルシェはその製品を高級市場に定位づけ、高価格で販売しています。これにより、ブランドは豪華さと排他性を象徴し、ラグジュアリーブランドとしての地位を確立しました。

ポルシェがラグジュアリーブランドである要因

ポルシェがラグジュアリーブランドと認識されている要因は、以下のような多くの要素によるものです。

優れたクラフトマンシップと品質
ポルシェの自動車は、最高レベルの工芸技術と品質で作られています。その詳細への注意と、高品質の素材の使用は、ブランドが高級市場での地位を確立する上で重要な要素となっています。

優れたパフォーマンス
ポルシェの車は、その卓越したパフォーマンスとドライビング体験で知られています。これは、スポーツカーの性能とラグジュアリーカーの快適さを組み合わせた結果で、これがポルシェの魅力の一部となっています。

歴史と伝統
ポルシェは長い歴史と豊富な伝統を持つブランドであり、これがそのラグジュアリー性を強調しています。特に、モータースポーツでの成功はブランドの評価を高めています。

排他性
ポルシェの車は高価格であり、それ自体が一種のステータスシンボルとなっています。この排他性は、ポルシェがラグジュアリーブランドとして認識される重要な要因となっています。

革新とデザイン
ポルシェは、その革新的な技術とタイムレスなデザインで知られています。特に、ポルシェ911はその美学とパフォーマンスで広く認知され、ブランドのアイコンとなっています。

これらの要素が組み合わさって、ポルシェはラグジュアリーブランドとしての地位を確立しています。

事例5  THE RITZ-CARLTON(ザ・リッツ・カールトン)

ザ・リッツ・カールトンは、高級ホテル業界のリーディングブランドの一つとして知られています。そのブランドが確立された方法は以下の通りです。

豪華さと高品質なサービス
ザ・リッツ・カールトンのブランドは、豪華な装飾、素晴らしい設備、そして何よりも卓越したカスタマーサービスに基づいて確立されました。顧客は、最高の体験とサービスを期待することができます。

場所と環境
ザ・リッツ・カールトンは、世界中のプレミアムな場所にホテルを設けています。これにより、ブランドは豪華さとエクスクルーシビティを提供しています。

ブランドの伝統と歴史
リッツ・カールトンの名前は、ヨーロッパの伝統的な高級ホテル、特にパリのリッツとロンドンのカールトンに由来します。これらの名前は豪華さと上品さを象徴し、それが新たなブランドの基盤となりました。

徹底したトレーニングと社員のエンゲージメント
ザ・リッツ・カールトンは、従業員がブランドの価値を理解し、それを反映するように厳格なトレーニングを行っています。それにより、ブランドは一貫性と高品質のサービスを保証しています。

ブランドの哲学と価値
ザ・リッツ・カールトンは、顧客を最優先に考え、その期待を超えることを目指すという哲学を持っています。これが、ブランドの評価を高め、顧客のロイヤルティを確保しています。

まとめ

今回紹介したブランドはいずれも冒頭に説明したラグジュアリーブランドの定義「歴史があり」「価格が高く」「高級ブランドであるという、イメージ力の高さ」を有しています。

しかし、どのブランドも最初からこのような地位を確立できたわけではありません。事例で紹介した通り、高品質であったり、斬新なデザインがあったり、特別な価値観を徹底していることなど何らかの飛びぬけた差別化要素を持っていたからこそ、それらがユーザーにより良い体験を与え今日の地位を築けたのだということが分かります。

ザ・リッツ・カールトンのようにサービス業では鍵を握るのは従業員です。従業員がいかに自社のブランドを理解し実践するかが大切になります。しかし、それを成しえるためには自社のブランドを経営者が高い具体性を持っており、徹底してまわりの人たちに伝えられるかどうかが最も重要なことでしょう。

ラグジュアリーブランドを作り、高付加価値なサービスを提供したい経営者の皆さまは今一度、ご自身の「こうありたい」という想いが具体的なものであるか考えてみてはいかがでしょうか。