中小企業診断士の試験、マーケティング、動画制作、地域の魅力について記録を残しています

社員のやる気を高める8つのモチベーション理論を解説-中小企業診断士と学ぶ経営戦略-

社員のやる気を高めるモチベーション理論

人には感情があります。仕事だから割り切れと無理強いしても最高のパフォーマンスを発揮することはほぼありません。逆にモチベーションが高ければ何も言わなくてもガンガン仕事をするようになります。この記事では中小企業診断士が学術的なモチベーション理論をいくつか紹介します。ぜひ皆さんも仕事で活かせそうなものがあれば試してみてください。

なお、これは中小企業診断士試験 1次試験の企業経営理論でも頻出トピックなので、受験生の方にも参考にして頂けるかと思います。

この記事を読んでいる方は以下の記事もよく読んでいます。

組織を活性化させるためのウェルビーイング5つの要素

マズローの6段階欲求段階説

マズローの6段階欲求説

みなさんも「マズローの5段階欲求説」を一度は聞いたことがあるかもしれません。マズローは晩年、5段階の更に一段上を追加6段階欲求説を提唱しました。

マズローは人間のもつ欲求を6段階でとらえました。この理論はモチベーションを研究する多くの研究者が参考にしています。マズローの説自体はモチベーションコントロールに使えるシチュエーションは少ないかもしれませんが、知っていると他の理論のイメージがしやすくなると思いますので簡単に解説します。

生理的欲求

食物、水など人間の生存にかかわる本能的欲求

安全欲求

安全ないし安定した状態を求め、危険を回避したいという欲求

社会的欲求

集団や社会に所属、適合し、そこで他者との愛情や友情を充足したいという欲求

承認欲求

他者から尊敬されたい、自分が他者より優れていると認識したい欲求

自己実現欲求

自己の向上、自己の潜在的能力を実現したい欲求

自己超越欲求

個人の利益を超えて同胞や社会のために貢献したい欲求

生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求は欠乏動機と言われ、基本的に自分以外のものによってしか満たすことができない欲求です。自己実現や自己超越欲求は他の欲求とは違い満たされるほどより関心が強化される成長動機です。

また、マズローの欲求段階説では低次の欲求が満たされることによって上の段階の欲求が生まれますが、高次の欲求が満たされないからといって低次の欲求をより満たそうとするものではない不可逆的なものであるとしています。

会社内でくすぶっている社員が居たら、社会的欲求や承認欲求を満たしてあげれば自己実現欲求へ移行し自分のスキルアップやパフォーマンス向上に意識が行くようになると考えられます。

また、その先に行くと自己犠牲をいとわない聖人君子のような人が誕生します(笑)

こういうと大げさですが、世の中を見ると少なからずこういう人たちが居ることが分かります。大多数がこのステージまであがれば、みんな幸せになれそうですね。いつかそんな世界を見たいものです。

アルダファーのERG理論

アルダファーのERG理論はマズローの説を修正したものです。

  • 基本的な生存の欲求 (Existence)
  • 人間関係にかかわる関係の欲求 (Relatedness)
  • 人間らしく生きたい成長の欲求 (Growth)

マズローとは異なり、3つの欲求が同時に存在したり並行したりすることがあり得るとしています。また、成長の欲求が満たされなければ、それに対する関心が低くなり、関係の欲求が強くなるといった上位欲求と下位欲求の間の可逆的な関心の移行を強調している点も特徴です。

アージリスの未成熟=成熟理論

アージリスの未成熟=成熟理論はマズローの「自己実現欲求」を深掘りした理論です。個人の人格は未成熟から成熟へ向かおうとする欲求によって変化するとしています。

未成熟→成熟

  • 受動的行動→能動的行動
  • 依存的→自立的
  • 単純な行動→多様な行動
  • 浅い関心→深い関心
  • 短期的展望→長期的展望
  • 従属的地位→優越的地位
  • 自覚の欠如→自覚と自己統制

管理原則に基づく行動は、組織構成員に未成熟な特質を要求することになるので成熟を求める組織構成員のモチベーションを低下させると述べています。組織構成員の自己実現欲求を満たし、組織の健全化を図るためには職務拡大、感受性訓練が有効です。

職務拡大

職務に対する単純作業感を和らげるために、職務の構成要素となる課業の数を増やして仕事の範囲を拡大する方法です。職務の水平的拡大とも言います。

感受性訓練

参加者すべての集団帰属意識と切り離し、孤独な場面をつくりだすことによって、参加者の集団参加欲求を高め、これを動機づけとして対人的共感性に目覚めさせるとともに集団形成のメカニズムや集団機能の本質について理解を深めるための訓練です。

マグレガーX理論・Y理論

マグレガーX理論・Y理論は人間観に基づくモチベーション理論です。X理論・Y理論における人間観は以下になります。

X理論における人間観Y理論における人間観
人間は生まれつき仕事が嫌いで、できることなら仕事をしたくないと思っている人間は生まれつき仕事が嫌いというわけではない
人間は命令され、統制されないと、その能力を発揮しない人間は自分が進んで身を委ねた目標のためには、それを達成して獲得する報酬次第で献身的に働く
人間は命令されることを好み、責任を回避したがる人減は条件次第で自ら責任をとろうとする

X理論に基づけば、人は低次の欲求しかもたいないことになり、この場合には命令と統制による管理が必要であるとしています。しかし、組織構成員の低次欲求がすでに満たされている場合も多く、仕事への意欲を高める為にはY理論に基づいて高次の欲求を満たす必要があるとしています。この場合には目標管理制度や権限移譲、職務拡大が有効です。

X理論:命令と統制による管理

Y理論:目標管理制度や権限移譲、職務拡大

ハーズバーグの動機づけ=衛生理論

マクレガーの理論をより詳細に研究したものがハーズバーグの動機づけ=衛生理論です。この研究によって、職務に対して満足をもたらす要因と、職務に対して不満をもたらす要因との間の違いが発見されましたが、必ずしも不満足な点(衛生要因)をすべて解消しなくても、満足をもたらす点(動機づけ要因)に働きかけることにより、モチベーションを高めることができるとしています。

満足をもたらす要因は、動機づけ要因とも言い以下のような項目があります。

①達成感

②承認

③仕事そのもの

④仕事への責任

⑤昇進

不満タをもたらす要因は、衛生要因とも言い以下のような項目があります。

①会社の方針

②上司の監督

③給与

④人間関係

⑤労働条件

⑥作業環境

動機づけ=衛生理論においては人間の高次の欲求を満たすためには動機づけ要因を積極的に改善していかなければいけないとしています。その具体的な方法として職務充実があります。職務充実は、仕事に計画、準備、統制といった内容を加え、責任や権限の範囲を拡大して、仕事そのものを質的に充実させて仕事の幅を拡げる方法です。職務の垂直的拡大とも言います。

マクレランドの三欲求理論

マクレランドは3つの主要な動機、欲求が存在することを提唱しました。

①達成欲求

ある一定の標準に関して、それを達成しようと努力することです。この欲求をもつ人は、より良い成績をあげたいという願望の点で他の人とは差があり、成功の報酬よりも自分自身が成し遂げたいという欲求から努力をします。また、偶然や他人の行動に結果を任せず、自分の責任でやりたいと思う傾向があります。このタイプは、成功確率が五分五分のときに最上の成績を残すと考えられています。ミッションが簡単すぎても難しすぎてもダメなことがポイントですね。

②権力欲求

ほかの人々に影響力を行使してコントロールしたいという欲求です。この欲求をもつ人は責任を与えられるのを楽しみます。また、競争が激しく地位や身分を重視する環境を好みます。実力至上主義の環境で勝ち上がりたいハングリー精神のある人たちですね。

③親和欲求

友好的かつ密接な対人関係を結びたいと言う欲求です。友情を求め、競争的な状況よりも協力を促すことを好み相互の理解が必要な関係を築くことを好みます。アットホームな職場、というPR訴求に代表されるように日本の中小企業の多くはこのタイプが多いのではないでしょうか。

過程理論

過程理論は、人がどのように動機づけられるのか個人の気持ちの流れに関する理論です。ここでは代表的な過程理論を紹介します。

①強化説

強化説は、自分の行動に対して適切な報酬を受け取ることで、その行動をよくやるようになり、罰せられたりするとその行動は控えるという理論です。簡単に言えば、褒められたらやる、怒られたら止めるということですね。この強化説では報酬はつねに与えるより、何回かに1度与える方が効果が高いと考えられています。

②公平説

公平説とは、自分と他人の報酬を比較する過程で生じる主観的な公平感や不公平感に焦点をあてたものです。自分が頑張った分と他の人が頑張った分に対する報酬の割合を見て、妥当だと思えば満足し、おかしいと思えば不満に感じるといった形です。この理論は、他人の方が明らかに頑張っていると思っていれば、自分より相手の方が報酬を貰っていても不満にはならないものとされています。

③期待理論

期待理論は、「報酬を獲得できる確率」×「報酬の魅力」が高いほど動機づけの要因になるというものです。どちらか片方が高くても、他方が低ければ動機づけにならないものとしています。

④目標設定理論

目標設定理論は、目標が動機づけの重要な要因になると考えられたものであり、難しい目標であり、その難しい目標に納得した場合に高いパフォーマンスを発揮するという理論です。留意点として、従業員が自分の目標設定の場に参加させても、目標に納得する可能性は上がりますが必ずしも高い業績につながるとは限らないということです。

内発的動機づけ理論

内発的動機づけ理論は、過程理論では説明できないような明白な報酬のない達成行動について説明したものです。内発的動機づけ要因には仕事そのものの面白さや楽しさ、仕事をすることから得られる有能感や満足感、自己決定の感覚などが挙げられます。

また、職務特性モデルでは職務の特性そのものが人の仕事の意欲に関連することを取り上げたもので、以下の5つの特性がある場合に内発的動機づけがしやすくなると考えられています。

①技能多様性:業務に必要なスキルが色々ある

②タスク完結性:社内の業務の流れの多くに関わっている

③タスク重要性:業務の出来栄えによる社内外へのインパクトが大きい

④自立性:自分なりに工夫して出来る程度が高い

⑤フィードバック:業務から感じる手ごたえ。

※ここでいうフィードバックは自分の主観的な手ごたえであり、他人からのフィードバックでないことに留意。

まとめ

組織の運営しいては組織に所属する社員のモチベーションコントロールは難しいです。学術的なアプローチをマネしたテンプレート的な対応をしても現実としてうまく行かないことも多々あります。そのようなときには中小企業診断士に相談することも手です。中小企業診断士はさまざまな企業の経営を見ており参考になる情報を多く持っていたり、状況に応じて専門家を紹介できる人脈を持っていることも多々あります。

一人で悩んでも苦しいだけのことが多くあります。

煮詰まったら是非中小企業診断士に相談してみてください。