いま世界的に仕事のストレスが問題になっています。人は幸せになるために働いているハズなのに会社の業績を上げるために一生懸命働き、その結果不幸になっているのです。このような背景から最近「ウェルビーイング」が注目されています。ウェルビーイングは肉体的・精神的・社会的に良い状態を保つことです。この記事では組織がウェルビーイングになるための5つの要素について紹介します。
参考文献:『職場のウェルビーイングを高める/ジム・クリフトン、ジム・ハーター著』
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目次
ウェルビーイングとは
ウェルビーイング(Well-Being)は直訳すると”良い状態”ですが、肉体的・精神的・社会的に良好な状況を指します。いま日本に限らず世界的にストレスや不安を抱えている人が急増しています。
労働環境においても、かつてない劇的な変化が起きており従業員やその家族、子供たちはこれまでになく不安な状態に陥りました。このような不安が毎日少しずつ人々の生活を蝕んでおり、やがては人々の幸福度や経済にまで影響を与えます。
このような現状を受けて、いまウェルビーイングが注目されはじめています。
従業員がウェルビーイングになると、以下の変化が起きるという研究結果も出ています。
- 創造性は3倍上がる
- 生産性が31%上がる
- 売上が37%上がる
- 欠勤率が41%下がる
- 離職率が59%下がる
- 業務上の事故が70%下がる
ウェルビーイングな組織をつくることで従業員が幸せな状態になるだけではなく経営成績もよくなります。まさに良い事ずくめですね。
ウェルビーイングには5つの要素があります。
- キャリア・ウェルビーイング
- 人間関係ウェルビーイング
- 経済的ウェルビーイング
- 身体的ウェルビーイング
- コミュニティ・ウェルビーイング
1個ずつ詳しく見ていきましょう。
要素1. キャリア・ウェルビーイング
1日の時間の使い方について詳細な質問をするナショナル・タイム・アカウンティングという調査によると、上司と過ごす時間は従業員にとって1日のなかで最悪の時間であるという結果が出たそうです。
しかし上司がスキルを身に着け、効果的なコーチが出来るようになれば従業員のキャリア・ウェルビーイングは劇的に変わります。たとえばキャリア・ウェルビーイングの高い従業員は、朝起きるとすぐに仕事のことを考えます。仕事が面白くチャレンジしがいがあると感じているからです。
仕事が嫌いな人にありがちな休日のために生きているという感じにはならず、仕事が趣味のような形になり仕事とプライベートの垣根がなくなり楽しめるようになる。つまり生活全体が生き生きするようになります。
従業員のキャリア・ウェルビーイングを高めるために出来る例として以下が挙げられます。
- 必ず組織の全員が自分の強みを知っているようにする
- 従業員の心身に悪影響を及ぼすマネージャーを排除する
- マネージャーをスキルアップして、ボスからコーチに変貌させる
- ウェルビーイングをキャリア開発の会話の一部として定着させる
要素2. 人間関係ウェルビーイング
仕事上で最高の仲間がいれば、従業員の生産性は格段に上がり成果も上がります。
社会的孤立や慢性的な孤独感は身体の健康にもメンタルヘルスにも深刻な打撃を与えます。孤立感を感じている人は、そうでない人に比べて死亡率が2倍になると言う調査結果もあります。
人は一般的に1日に最長6時間までは人と関わる時間に比例して気分が向上します。よい1日であると思えるためにはこのような時間を作ることが大切です。
人間関係ウェルビーイングを向上させる施策の一例として以下が挙げられます。
- 新規人材の定着を図るオンボーディング施策には他の人との交流を取り入れる
- 従業員と話をして、よく相手を理解する
日本のウェルビーイング経営の成功事例として、PHONE APPLI社が挙げられます。同社は人間関係ウェルビーイングを重視しており以下の取り組みをして社内の良好な人間関係を構築しています。
- 従業員満足度アンケートを定期的に行い、分析と改善を欠かさず行う
- 1 on 1ミーティング (毎週30分必ず時間を作り、仕事の話に限らず上司が部下の話を聞く)
- Span of Control 7 (管理者が直接管理する部下の数は最大7名までとする)
- サンクスカードの実施
- オンライン雑談タイム
- PA Walking Cup (イベントを行い歩いた歩数を目標値とする)
要素3. 経済的ウェルビーイング
お金があることによって将来への金銭的な不安が減り、欲しいものも手に入りやすくなるので年収に比例して幸福度が上がります。しかし、年収800万円を超えるとそれ以降はどれだけ年収が増えても幸福度が一定だという研究結果があります。
ある程度お金が手に入れば生活が安定するので不安がなくなるためであると考えられます。また、自分自身が十分なお金があると認知していれば実際の年収に関係なくウェルビーイングが高くなることも分かっています。
いまの世の中、SNSでマウント合戦が繰り広げられるので幸せの閾値が上がっているように感じます。他人と比較して相対的な価値観を得るのではなく自分自身を絶対基準として考えれば経済的な不安なども減らせて幸せになれる可能性があがるのではないかと僕は思います。
経済的ウェルビーイングを高める施策の一例として以下が挙げられます。
- ファイナンシャル・プランニングに関するリソースやツールを提供する
- 長期的な貯蓄と退職後に向けた投資を奨励する
- 公平感を高めるべく、従業員と給与に関する会話を円滑にするための研修を実施する
- チームのインセンティブを利用する
- 全体的な報酬制度に従業員のウェルビーイング向上を勘案する
要素4. 身体的ウェルビーイング
僕は最近咳喘息を患い、咳で夜も眠れず慢性的に疲労感があり辛い時期がありました。そのときに何をするにも健康あってのことだと心から強く思い、健康の大切さを実感しました。
皆さんも直感的にお分かりになるかと思いますが健康は大切です。身体的ウェルビーイングは基本的に自分の健康を管理することです。そうすることで、やりたいことをなんでもできる活力を確保できます。
特に睡眠と運動は大切です。睡眠や運動をすることで落ち込んだ気分をリセットし、免疫力を高めることができます。
その他、身体的なウェルビーイングを高める施策は以下が挙げられます。
- 長期的に見て体のために良い行動を意識的にする
- 身体的ウェルビーイングの重要性を部下に伝えることをマネージャーの期待値に入れる
- 管理職や従業員が信頼性の高い健康を高めるための情報を得られるようにする
要素5. コミュニティ・ウェルビーイング
人は「自分は大きな何かの一部である」と感じたときに大きく満たされます。コミュニティはそのような感情を人々に抱かせます。
世界をよりよくするような意味のある仕事は、従業員のウェルビーイングにとって重要です。仕事を超えて、自分の人生に重要な意味があることを実感できるためです。このような目的意識は地域レベルでとても強くなります。社会がどんなにデジタル化されても人々は実在する場所に住んでいて、そこが社会生活の基盤になります。
地元のサッカーチームやプロ野球チームが勝つ、もしくはエンゼルスの大谷選手のように日本人が海外で活躍すると嬉しくなるのと同じ感覚です。このような一体感によって幸福を得るのがコミュニティ・ウェルビーイングです。
コミニュティ・ウェルビーイングを高める施策の一例として以下が挙げられます。
- 従業員にとって一番大切なコミュニティの問題は何かを知る
- 従業員には、自分にとって意味のあるコミュニティの活動を選ぶよう奨励する
- 従業員が地域社会で行っている活動について共有する機会を設け、参加を称える
まとめ
人は幸せになるために働くもの。売上を作る為に不幸になるのでは何の為の人生か分かりません。より充実した人生を送るためにもウェルビーイングの考え方はとても有意義なものだと思います。
今後もウェルビーイングの情報は定期的に発信していきたいと思います。