こんにちは!グシオです。今回のテーマはみんな大好き(?)な”ゆるキャラ”です。地域活性化・地方創生に向けてどうすれば最大効果を発揮できるか紐解いていきます。
突然ですが質問です!「ゆるキャラ」と聞いて何を思い浮かべますか?
そこのあなた。そう、あなたです。
いま思い浮かべたのは「くまモン」ではありませんか?
くまモン以外を思い浮かべたあなたはかなり少数派です(偏見)
くまモンと言えば、ゆるキャラで最も成功した事例の1つです。でも、いまこの記事を読んでいる皆さまはくまモン以外にもゆるキャラの名前を何体か知っているのではないでしょうか?
ゆるキャラって基本的にはとても印象に残りやすく好意的にみられるものであると考えています。むしろ、これはゆるキャラだけに限らずマスコット全般に言える話かもしれません。
僕は小さいころからマスコットが大好きでサッカーや野球で応援するチームを選ぶときはマスコットの好みで選んでいました。何となく人間よりも動物モチーフの2次元キャラの方が気になったんですよね。なぜ動物モチーフの2次元キャラだと愛着を感じるのかと言うとディズニーやサンリオ、子供向けのアニメ番組のキャラクターを見て育った影響が大きいと自己分析をしています。そして、僕と同じようにアニメキャラを見て育ち、同じように考える人は結構居るんじゃないかと仮説を立てています。
一昔前にゆるキャラブームが到来しました。当事者ではないので推測になりますが、観光PR担当者が地域活性化や地方創生を考える際にご当地グルメと並んでゆるキャラの開発を最優先で推進したであろうことは想像に難しくありません。その裏付けとしてご当地ゆるキャラは2015年は714体だったのに対して2021年は1553体まで増えたというデータもあります。*1
*1 参考:『日本経済新聞「ゆるキャラ、経済の起爆剤 くまモン年間売上高1700億円」』
いろいろな地方自治体が自分の地域のゆるキャラを作りました。第三者から見ても上手くいっているなと感じる地域もありますが、どちらかと言えばそれは少数派であり、なかなかキャラクターが認知されずに悩んでいる地域の方が多いように見受けられます。
僕はゆるキャラが好きなので色々な地域のゆるキャラをネットサーフィンして見て回っていますが、どこの地域も自分たちの特色を活かし、想いをしっかり込めてコンセプトとキャラクターを作っていると感じました。
それでも差が出てしまいます。では何が明暗を分けているのでしょうか?
人口規模。
もともとの知名度。
使える予算。
たしかにこれらも大きな要因です。
しかしそれ以上にマーケティングで差が生じていると僕は考えています。
この記事ではゆるキャラが地域活性化・地方創生にどのように貢献しているのか、成功した事例はどのようなものなのか、様々な研究結果や調査論文をゆるく紹介して、どのようにゆるキャラを活用すれば地域活性化・地方創生に向けて効果を最大化できるのかをマーケティングの観点から考察します。
関連記事:『ゆるキャラの炎上マーケティング、その後どうなった?』
目次
ゆるキャラ の概要
ゆるキャラはかわいいキャラクターやマスコットの総称として使われることもありますが、狭義の意味では国や地方公共団体その他の公共機関等のマスコットキャラクターを指します。今回の記事でも狭義の意味をベースに話を進めます。漫画家のみうらじゅんさんが2000年に行われた『第15回国民文化祭・ひろしま2000』のメインキャラクターとなったブンカッキーを見てゆるキャラの概念を思いついたそうです。*2
「ゆるキャラ」は扶桑社とみうらじゅんさんによって商標登録もされています。
*2 参考:『毎日新聞「「ゆるキャラ」という呼び名を最初に使ったのは…」』
この経緯を見ると、元祖ゆるキャラは「ブンカッキー」ということになるのかもしれませんね。そんなブンカッキーのTwitterも紹介しておきます。
ゆるキャラとして認められるためには以下の”ゆるキャラ3箇条”を満たしている必要があります。
ゆるキャラ3箇条
- 1・郷土愛に満ち溢れた強いメッセージ性があること。
- 2・立ち居振る舞いが不安定かつユニークであること。
- 3・愛すべき、ゆるさ、を持ち合わせていること。
なるほど。
3箇条に目を通して僕は思いました。
この定義だけ見たら僕自身も「ゆるキャラ」と言えるのではないだろうか
結論から言うと、この目論見は外れました。じつは幻の4箇条目があり、みうらじゅんさんは「原則として着ぐるみ化されていること」も条件に挙げていました。これによって「オレがゆるキャラだ」とかいう変なオジサンが出てくるのを防ぐ意味合いがあるのかもしれませんね。(真意は分かりません)
しばらくはゆるキャラもマイナーな存在でした。
しかし2007年、1体のゆるキャラによって爆発的なブームが巻き起こりました。
どのゆるキャラか分かりますか?
正解は「ひこにゃん」です。
ひこにゃんは2007年に築城400年を迎えた彦根城の記念イベント「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクターとして登場し全国規模で人気を得て、ゆるキャラブームの火付け役となりました。
その後くまモンやバリィさんなどユニークなゆるキャラが続々としてブームがブーストされますが、2022年4月現在はブーム熱も落ち着き、一握りのスターキャラと多くの認知不足キャラの2極化状態にあります。
ゆるキャラの経済効果および具体的なメリット
ゆるキャラが人気になるとどれくらいの経済効果があり、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか?
調べてみた結果を以下にまとめました。
グッズなど小売り販売の売上増加
ここ数年のゆるキャラ市場全体の経済効果はあまり調査結果が見当たらなかったので、データを公表しているクマもんを題材にします。
くまモンの経済活動における最大の魅力は、熊本県の承認を受ければ無償でキャラクターの使用ライセンスが得られることです。熊本で生産活動を行っている人々が気軽に商品パッケージにくまモンを利用でき、くまモンのロゴが入っているのを見た観光客がお土産として購入することで生産者の売上が伸び、お土産を渡された人がくまモンを認知して熊本に興味を持ち潜在的観光客となる。この好循環なサイクルを形成しています。この成果は数字としても顕著に表れています。
熊本県の調査結果によれば、民間企業・団体によるくまモン利用商品などの売上高合計が1,698億円を超え、9年連続で売上高を更新したとのことです。これは前年よりも119億7,320万円(前年比107.6%)増加していて、9年連続で売上高を更新、2011年からの売上高の累計は9,891億円となったそうです。
新型コロナ感染症の影響で海外収益が減額しているのも関わらず売上を伸ばしているから凄いです。
この数値はパッケージにくまモンが表示されている「グッズ」や「食品」など小売販売の観点から見た経済効果です。ゆるキャラが人気になることでお土産としてグッズを買う方も増えるようですね。ただし、ゆるキャラの経済効果は小売りだけに留まりません。
観光客増加による消費拡大
ゆるキャラによって、その土地の魅力が認知されたり、ゆるキャラが登場するイベントに参加数などの目的で実際に訪れる観光客が増えるといった事例もあります。
これをうまく戦略的に取り組んでいるのが彦根のひこにゃんです。彦根城に行けば、いつでも会えるよう ひこにゃんは彦根城に毎日います。こういった活動がどれだけ来場者数に影響を与えているのかを示すのが下記の図表「彦根城への来場者数」です。
引用:経済効果測定調査報告
ひこにゃんが登場した2007年(平成19年)から劇的に来場者数が増えていることが分かります。
雇用機会増加
先述の彦根城の例を見て分かる通り、特定スポットへの来場者数が増えるとそれに合わせて周辺施設の利用も増えるので地域経済が活性化します。これによって雇用機会の増加も期待できます。具体的にどれだけ雇用が増加しているかを示す調査結果やデータはありませんでしたが、下記の彦根市が提供しているデータを参考に紹介します。
引用:経済効果測定調査報告
2020年の彦根は観光客数が90万人に対して観光消費額79億円が発生したそうです。上記図表を見ると宿泊や飲食など地域店舗にも大きな金額が落ちていることが分かります。完全にざっくり計算ですが売上に対する30%が雇用人件費であったとした場合、およそ24億円分の雇用が生まれていると考えられます。
地域住民の地元愛増加
ゆるキャラによって地域住民がどれだけ地元愛が高まるのかが分かる調査結果やデータは見当たりませんでしたが、参考になる調査結果を見つけたので紹介します。東京市町村自治調査会の調査結果を下図に示します。
参考:『公益財団法人 東京市町村自治調査会「ご当地キャラクターの活用に関する調査研究アンケート調査結果 報告書」』
この結果によれば、ゆるキャラによって「地域住民がその地域の魅力を見直すきっかけになる」あるいは「どちらかというとそう」と答えた人の割合は全体の64%いました。
地元愛が高まるかは分かりませんが、魅力を見直すキッカケは得られているようです。しかし、「何のために作っているか分からない」や「地域の魅力を見直すきっかけになっていない」と感じている人も一定数いるようです。
ゆるキャラの活動計画をしっかり立てて、観光客だけではなく地域住民にもその存在や活動の意味をアピールして理解してもらうことが大切であると考えられます。
また役立つ調査結果を見かけたら記事を随時更新します。
ゆるキャラの成功事例に見るマーケティング
くまモンとひこにゃんを中心にここまで紹介しましたが、この2体はマーケティングの観点から共通点がいくつか見られます。その中でも、多くのゆるキャラにも適用できる汎用性の高い点について説明をします。なお、新しくキャラクターを作るというよりは既にキャラクターがあることを前提に話を進めます。
1.ゆるキャラの目的と活動を明確にする
ゆるキャラに限らず様々なことの基本なので、重々承知のことだと思いますがあえて言います。
ゆるキャラの目的と活動を明確にすることが大切です。
当たり前のことだと仰るかもしれませんが、どこまで明確化できているのかがポイントです。
くまモンは熊本県の認知拡大を目的としています。九州他県に比べて熊本県への興味や関心をほとんど持たれていなかったことを背景に、近畿地方・中国地方をターゲットにして認知度をアップさせるために行われた「KANSAI戦略会議」のなかで誕生しました。
くまモンは近畿・中国地方の方に対して熊本県の認知度を高めるといった具合で目的とターゲットが明確です。くまモンがまだそこまで人気の無かった頃にとった行動は、大阪に行って出張PR活動でした。くまモンが配布する名刺には「撮影可能で肖像権も申しません」と記載があるのもSNSなどに写真をアップしてもらい認知拡大につなげて貰う狙いが見えます。
何となく地域の良い所をSNSなどでアップするのは目的と活動が明確化されているとは言えません。くまモンのように誰に向けてPRするのかが明確であればこそ、「大阪に行く」「名刺にさりげない一言を載せる」といった活動やマーケティング施策が具体的になることが分かりますね。
前述の通り、くまモンのキャラクターライセンスは熊本県の許可が得られれば無償であるという事も認知拡大を第一に考えていたからこその発想であるとも考えられます。
全国各地に出張に行き積極的にPR活動をしていますが、当初のターゲットである近畿・中国地方への出張は今もしっかりされているようです。
みなさんの住む地域のゆるキャラは目的が明確に設定されていそうですか?
「地域をPRしたい」「人を呼び込みたい」などの目的あるかもしれません。その目的を達成するための活動であると第三者目線から見ても分かる活動をゆるキャラはしていますか?
もしもあまり人に見られていないSNSに地域の写真や情報をアップしているだけで、何らかの試行錯誤の意図も見られないような感じであれば、それは目的と活動が明確化されているとは言えません。
何が目的なのか。
誰にどうなって貰いたいのか。
そのための手段として何をするのか。
その活動の結果は見える化できるのか。
活動の課題は何で今後改善を期待できるのか。
もしも、まだ成果が中々出せずに悩んでいるゆるキャラが居たら今一度原点を振り返ると何かキッカケを掴めるかもしれません。
2.ゆるキャラと触れ合える機会をたくさん作る
ディズニーのグリーディング(キャラクターと写真を撮れる場)では順番待ちで何時間も待つことが珍しくありません。SNSなどで見かけたキャラクターと自分も実際にあって交流したいと思う人に対して、交流できる機会を作ることで更なる認知拡大に繋がるだけではなく交流した人がより深いファンになるというメリットがあります。
くまモンもひこにゃんも交流の機会づくりはとても徹底して活動しています。むしろこの活動に一番注力しているのではないでしょうか?
ただし、交流の仕方は活動の目的によって若干変わってきます。たとえば、くまモンは熊本県外にも積極的に出張していますが、ひこにゃんは彦根に訪れた人を中心に交流しています。これは、くまモンが認知拡大を重視しているのに対して、ひこにゃんは彦根に来てもらうことを重視しているからです。先ほどの話と重複しますが、目的を明確にすることで、交流の仕方もこのように変わってくるのが分かります。
交流の仕方はどうあれ、どちらも沢山の人と交流しています。大きな労力が発生しますが、その分交流した人に好きになって貰える機会も増えると思いますので積極的にやりたい活動の1つであると言えるのではないでしょうか。
というわけで、何をするか迷ったら、とにかくイベントごとには顔を出して人と交流する機会を作る、というのもアリかもしれません。
3.ゆるキャラを認知してからファンになって貰うまでの導線を設計する
これもまた「目的と活動を明確にする」という話に通じるものなのですが、ゆるキャラを知って貰ってからファンになってもらうまでのユーザーの導線を意識して活動するとより良い効果が期待できます。
たとえば、くまモンの持っているWebのツールは以下があります。
- ホームページ
- ブログ
- YouTube
- 配布イラストやLINEスタンプ
これらを活用して以下のような導線設計が一例として考えられます。
- TwitterやInstagramで情報を発信してユーザーにゆるキャラを認知してもらう
- ゆるキャラに興味を持ったユーザーがホームページでより詳しい情報を調べる
- 実際にゆるキャラと交流したいと思ったユーザーがゆるキャラと触れ合える場を用意する
- ゆるキャラと触れ合ったユーザーがSNSで情報を発信する。また、よりゆるキャラを好きになったファンがブログを読んで更なる関心を高めたりLINEスタンプを気軽に使えるようにする
まずはゆるキャラを知って貰い、興味関心を高め、ファンとしてのエンゲージを高めて、ファンを定着させるという一連のプロセスです。必ずしもこの通りのプロセスにする必要はまったくありませんし、ゆるキャラの目的によって施策も異なります。何をするにしても、それぞれの活動にしっかり意味を持たせて俯瞰したときに全ての活動が1つのストーリーでつながっていることが大切です。
まとめ
「ゆるキャラを上手に活用すれば多くの方にその地域を認知してもらえて、うまくいけば大きな恩恵を受けることもできます。そのためには目的と活動を明確にしたマーケティングを大事にしましょう」という話をさせて頂きました。ただ、僕はゆるキャラはその地域に興味を持って貰うための入口としての役割であり、くまモンみたいにそれ以上の成果を出せるパターンはほとんど稀であり、そこに期待しすぎない方が良いと考えています。
ゆるキャラは記憶に残りやすく愛着がわきやすいです。多くの人から好かれることは大きな強みである反面、その地域のことを深くを知ってもらうことには不向きです。もしも、ご当地ゆるキャラがブームになり観光客が増えたとしても、その先に何もないとキャラ人気がなくなったら観光客がその地域への興味を失ってしまうかもしれません。そうなると、また地域経済が低迷してしまいます。
なので、まずはゆるキャラでその地域に興味を持って貰い、その先に興味を深堀りするような観光名所や資料、イベントなどのコンテンツを用意してゆるキャラだけではなくその地域そのものを好きになって貰うような導線を設計することが大切であると僕は考えています。
あるいは観光客ではなく定住者を増やしたい場合は施策も変わってくるかもしれませんが、いずれにしてもゆるキャラだけを切り取って考えるのではなく、目指したい姿(ゴール)を決めて、そこにたどり着くまでのマーケティング・コンテンツの全体設計と目標設定をする。その施策の1つとして、ゆるキャラを活用する。こういう認識を持つことで地域活性化・地方創生に向けて最大効果を得られるのではないかと思います。
ただ、実際にやってみると現実は厳しくて失敗ばかりなことも珍しくありません。それでもめげずに頑張る方々を僕は尊敬していますし、力になりたいと思っているので中小企業診断士になりました。僕自身もまだまだ力不足ではありますが、情報発信だけではなく地域活性化・地方創生に実践的に貢献できるよう精進してまいります。
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