最近SDGsについて色々と調べる機会がありますが、日本国内においてSDGsがだいぶ浸透しているように見受けます。活動規模の大なり小なりの程度はあれど、多くの企業がホームページにSDGsのナンバリング目標と具体的な活動内容について宣言しています。色々とネットで調べていたなかで、ここのSDGsスゴイ!と思った中小企業を紹介します。
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目次
事例1 GREEN PROP (福岡県)
GREEN PROPは福岡県にある従業員数30名弱の産業廃棄物処理業者です。
この会社のスゴイところはSDGs (CSR) の取り組みをバックキャスティング・アウトサイドインアプローチで設計して、KPIと具体的なアクションを組み立てて、着実にPDCAを回して分かりやすくレポート化していることです。
同社のSustainable Reportを是非一読頂きたいのですが本当によく考えて取り組みされています。
何をやるべきなのかについては最初に自社を分析し、経済・社会・環境 (SDGsウェデングケーキモデル)の側面から自社と関連のある社会課題を洗い出し、ステークホルダーからの期待・要望を加味して特に自社と関連の深い重要社会課題を特定されています。
そして特定重要課題の解決にむけての方針を見直し、KPI(数値目標)と具体的な取り組みを設定されています。その後、KPI達成に向けてPDCAを回して下図のように評価をしています。
ここまでしっかりと取り組みされている中小企業はなかなか無いと思います。むしろこの会社の活動を色んな人に知って貰った方が良いと思って今回の記事を書くに至ったくらいです。活動報告レポートもしっかりと作られていらっしゃるので、SDGsに興味があるけれどどう取り組んで良いか分からない企業の方は参考になることも多くあると思うので一読をオススメします。
事例2 大川印刷 (神奈川県)
株式会社大川印刷は明治14年設立の神奈川県の老舗企業であり現在およそ40名ほどの従業員がいます。インターネットの台頭によって印刷業界は厳しい状況が続いています。そのような環境下で、大川印刷はSDGsの考え方を取り入れ事業の取り組みを再定義しました。
印刷業は紙やインキを大量に使います。多くはリサイクルできていますが、同時に大量の廃棄物を出しているため、環境負荷をかけます。そういった現状を変えていきたいと考えて環境負荷を抑えた『環境印刷』を推進するようになりました。
具体的には2004年にはカラー4原色と一部特色インキを、石油系溶剤を全く使用していない「ノンVOCインキ」に切り替え、大気汚染の原因物質を大幅に削減し、用紙に関しても適切な森林管理が行われている木材チップを原材料にした「FSC®森林認証紙」の使用をスタートしたのです。
これによって大企業から中小企業のサプライヤーへ環境要望に応えることができ、受注が大幅に増えて大川印刷は斜陽産業であるにも関わらず2000年以降最高益を記録しました。
この取り組みは売上だけではなく、労働環境の改善にもつながりました。実際に工場スタッフは『石油系溶剤のツンとしたニオイがなく空気が良くなった』という変化を感じとり働きやすくなったとのことです。
これらの取り組みが各地で大きく評価されて以下を受賞しています。
- 第2回ジャパンSDGsアワード「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」受賞
- 第1回横浜市SDGs認証制度”Y-SDGs”最上位「Supreme」認定
- 2015年度環境大臣表彰受彰
事例3 日本理化学工業 (神奈川県)
日本理化学工業は昭和12年に設立た文房具メーカーです。従業員はおよそ90名ほどですが、そのうち63名が知的障がいを持つ方とのことです。障がいのある社員が、まず今ある能力で仕事ができるように、そして、より能力を高めていけるように、作業方法の工夫・改善をおこない環境作りに努めています。
具体的には1人ひとりの能力に合わせて治具を作り、問題なく仕事ができるようサポートしています。これはSDGsターゲットの「8.働きがいも 経済成長も」「10 人や国の不平等をなくそう」につながる取り組みだと思います。
また、日本理化学工業はチョークの国内マーケットトプシェアを誇ります。
誰もが理解しやすい授業を⽬指し、ユニバーサルカラーデザインによる「eyeチョーク」を製造・販売。⿊板に書いた際の⾒やすさにより、良質な教育の提供に貢献したり、年間20万トン廃棄されるホタテ⾙殻の微粉末を再⽣活⽤したチョーク「ダストレスチョーク」を製造・販売。微粉末のホタテの⾙殻を加えた事で、より鮮明な発⾊、粉末も⾶散しにくいなど、チョークの品質向上と社会課題解決を両⽴しました。
これらの取り組みが評価され、国内⼤⼿企業や社会的影響⼒のあるインフルエンサー等から共感を得られ、イベントの協⼒等を経て新たな受注へと繋げたり、 SDGsに則した製品を海外の展⽰会でPRしたことで新たな販路の開拓に繋がりグローバルな事業展開に成功するに至りました。
なぜいま企業がSDGsをやるべきなのか
結論から言うと、以下3つの実利を得られる可能性が高まるためにやるべきだと考えています。本質的にはもっと根本的に重要視しなければいけないところがあると思いますが、この章では何故ビジネスで実利になるのかを中心に説明します。
- 補助金や投資を受ける機会が増える
- 優秀な学生にアプローチしやすくなる
- 新しいビジネスチャンスを得られる
SDGsはただのキレイごとだったり、うさん臭さや利権がらみ等を感じている方もいらっしゃるかもしれません。利権的なところがどうなっているのかは分かりませんがよくよく調べるとSDGsは今の世の中に必要なものであり、企業のビジネスにおいてもポジティブな要素が多数含まれていることに気付きます。
プラゴミによってウミガメなどの海の生物が悲惨なことになっている写真や記事を見たことがある方もいらっしゃると思いますが、これらの被害は知らないうちに人間も受けています。町を歩けば目に見えないマイクロプラスチックを気付かないうちに吸い込み、消化されずに体にも蓄積されてます。数十年後に公害として何らかの被害が形になって目に見えてくる可能性もあります。
地球温暖化の影響で2040年までに日本で大雨などの異常気象が現在の3倍に増えるという予測もあります。これからも何も意識せず産業を発展させるとより深刻な事態になることは間違いありません。
このように誤った道を進み続けて取り返しのつかないことになる前にSDGsという旗印のもとに世界で活動をしています。
一番世の中へのインパクトの大きい法人企業にもSDGsの取り組みをしてほしいところですが、基本的に利がなければ企業は中々動こうとしません。みなさんも世の中のためになると思ったことでも儲からなければ実行を躊躇されることもあるでしょう。このような状況を打開するために世界各国が主導となりSDGsに関する取り組みに対する助成金や補助金、投資を促進する流れを作ろうとしています。
補助金などの実利があればSDGsを取り入れようと考える企業も増えます。つまり、社会問題を事業で解決するビジネスモデルで持続可能な収益を上げる企業を増やそうとしているのです。この流れに乗ることで企業は政府お墨付きの支援を得られるのです。ボランティアは体力や財力がなければ続けられませんがビジネスとして世界をより良くしようとするのであれば持続的な活動ができます。この部分で利権問題やうさん臭さを感じる人が居るのかもしれません。
また、最近は学校教育でSDGsの大切さを学ばせていることもあり就職活動でSDGsの取り組みをしている企業に就職したいと考える学生も増えているようです。
株式会社学情のアンケート調査によれば、2024年3月卒業(修了)予定の半数以上の学生が、「就職活動で、企業のSDGsに関する取り組みを意識している」と回答したとのことです。「仕事を通して、社会に貢献したい」「社会貢献性の高い事業をしている企業で働きたい」などの声が上がりました。また、7割弱の学生が「企業がSDGsに取り組んでいることを知ると、志望度が上がる」としています。
本音でそう思っているのかは謎ですが(笑)、学生が建前上でもそういうのであれば企業も優秀な人材を囲う為にSDGsを意識して実行した方が有利でしょう。
まとめ
事例にあるようにSDGsに本気で取り組み”良い会社”になることで、結果として新しいビジネスチャンスやブランディングをするチャンスが拡がります。CSRのように必ずしもボランティアである必要はありませんし知恵と労力次第でお金をかけずに実行することもできます。
みなさんも会社を、地域を、世界を良くするためにSDGsの考え方を経営に取り組んでみませんか?