最近、日本では空き家問題が社会課題になっています。空き家問題は読んで字のごとく、日本全国で増加している空き家が地域社会に様々な問題を引き起こしていることを指します。総務省の統計によると、2018年の時点で全国の空き家数は約846万戸あり、これは全住宅戸数の約14%に相当します。この数は今後も増加し続け、2040年には約1000万戸に達すると予測されています。では、空き家が増えるとどんな問題が起こり、空き家問題を解決するにはどのような施策があるのでしょうか。一緒に見ていきたいと思います。
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目次
空き家問題の原因
空き家問題の背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。ここでは、主に以下の5つの原因について、詳細に解説します。
1. 高齢化社会の進展と相続
少子高齢化社会の進展により、高齢者の割合が増加しています。高齢者になると、住宅を維持するのが難しくなり、老人ホームなどへ移住したり、子供と同居したりするケースが増えています。
また、高齢者の一人暮らしが増加していることも空き家問題を深刻化させています。高齢者が亡くなると、相続人が空き家を継承しますが、必ずしも住むわけではありません。特に、地方の空き家は、相続しても遠方に住んでいるため、管理や維持が困難な場合が多く、放置されてしまうケースが多いのです。
2. 人口減少と地方の過疎化
地方では、人口減少が著しく、過疎化が進んでいます。若者が都市部へ流出しているため、地方の住宅需要が低迷しています。
また、地方の経済衰退も空き家問題に拍車をかけています。地方では、産業の空洞化が進み、雇用機会が減少しています。そのため、収入が減少し、住宅を維持することが困難になる人が増えています。
3. ライフスタイルの変化
ライフスタイルの変化も空き家問題の一因となっています。核家族化や晩婚化が進み、一世帯当たりの人数が減少しています。そのため、広い家が必要とされなくなり、大きな一軒家が空き家になるケースが増えています。
また、近年では、都心回帰の動きも強まっています。地方から都市部へ移住する人が増えているため、地方の空き家が増加しているのです。
4. 経済状況の悪化
2008年のリーマンショック以降、経済状況が悪化しています。住宅ローン返済が困難になり、家を放棄せざるを得ない人が増えています。
また、近年では、新型コロナウイルス感染症の影響で、経済状況が悪化している人が増えています。特に、観光業や飲食業などのサービス業は大きな打撃を受けており、事業継続が困難になり、家を放棄せざるを得ない人も出ています。
5. その他の要因
上記以外にも、空き家問題には様々な要因が考えられます。
- 建物の老朽化: 老朽化した建物は、解体費用が高額になるため、空き家になってしまうケースがあります。
- 防災意識の低さ: 地震や台風などの自然災害に対する防災意識が低いため、災害で被災した家が放置されてしまうケースがあります。
- 法制度の不備: 空き家に関する法制度が不備であり、空き家を放置しても十分な措置が取れないケースがあります。
空き家問題への取り組み事例
空き家問題解決に向けて、全国各地で様々な取り組みが行われています。ここでは、代表的な取り組み事例を5つ紹介し、それぞれの特徴や効果、課題などを詳しく解説します。
空き家バンクは、自治体が運営する空き家情報データベースです。空き家所有者と借主・買主をマッチングする役割を担っており、空き家の円滑な流通促進に貢献しています。
特徴
- 空き家所有者と借主・買主の双方が安心して取引できるよう、情報公開やトラブル防止のためのサポート体制を整備している。
- リフォームやリノベーションなどの相談窓口を設け、空き家の利活用を支援している。
- インターネットで空き家情報を検索できるシステムを導入している自治体が多い。
効果
- 空き家の放置抑制効果がある。
- 空き家の適正管理を促進する効果がある。
- 地域の住宅市場を活性化する効果がある。
課題
- 空き家所有者からの情報登録が少ない自治体が多い。
- 借主・買主のニーズに合致する空き家が見つかりにくいケースがある。
- リフォームやリノベーションの費用負担が大きい。
特定空家は、老朽化や破損などによって倒壊の危険性が高い空き家を指します。特定空家制度に基づき、自治体は所有者に対して、必要な措置を講ずるよう指導・命令することができます。
特徴
- 倒壊の危険性が高い空き家を早期に特定・除去できる。
- 地域住民の安全・安心を守ることができる。
- 空き家問題の抜本的な解決につながる可能性がある。
効果
- 倒壊による被害を防ぐことができる。
- 景観を改善する効果がある。
- 地域の治安向上に貢献する効果がある。
課題
- 特定空家に対する所有者の理解や協力が得られないケースがある。
- 特定空家の解体費用が高額になる場合がある。
- 行政手続きに時間がかかる場合がある。
空き家改修・リフォーム補助金制度は、空き家を安全・快適な住居へと再生するために、自治体が改修・リフォーム費用の一部を補助する制度です。
特徴
- 空き家の利活用を促進する効果がある。
- 地域の住宅供給量を増やす効果がある。
- 防災性の高い住居づくりを支援する効果がある。
効果
- 空き家の放置抑制効果がある。
- 地域の住宅市場を活性化する効果がある。
- 地域住民の生活環境を改善する効果がある。
課題
- 補助金の対象となる要件が厳しい自治体が多い。
- 補助金の額が少ない自治体が多い。
- 改修・リフォーム業者の選定に困る場合がある。
シェアハウス・ゲストハウスへの転用も
空き家問題の解決策の一つとして、シェアハウスやゲストハウスへの転用が注目されています。ここでは、シェアハウスとゲストハウスの違い、それぞれのメリット・デメリット、転用時の注意点などを詳しく解説します。
シェアハウスとゲストハウスの違い
シェアハウス
- 複数の入居者が一つの住居を共有する形態
- 入居者は、家賃と共益費を支払う
- キッチン、リビング、浴室などの設備を共同で利用する
- 入居者同士の交流が活発
- 長期滞在を想定
ゲストハウス
- 旅行者やビジネス客向けの宿泊施設
- 1泊から利用可能
- 個室またはドミトリータイプが多い
- スタッフが常駐している
- 短期滞在を想定
シェアハウス・ゲストハウスへの転用メリット
- 空室リスクの軽減: 入居者が複数いるため、空室リスクを軽減できる。
- 収益性の向上: 家賃収入だけでなく、共益費収入も得られる。
- 地域活性化: 人口流出を抑制し、地域に活気をもたらす。
- 多様な人との交流: 入居者同士、あるいは利用客との交流を通して、新しい出会いや刺激を得られる。
- 地域の魅力発信: ゲストハウスの場合は、地域の魅力を発信する拠点として活用できる。
シェアハウス・ゲストハウスへの転用デメリット
- 初期投資が必要: リノベーションや家具・家電などの購入費用がかかる。
- 管理・運営の負担: 入居者同士のトラブル対応や清掃などの管理・運営が必要になる。
- 法令遵守: 消防法や建築基準法などの法令を遵守する必要がある。
- 周辺住民への配慮: 騒音やゴミなどの問題に配慮する必要がある。
- ゲストハウスの場合は、宿泊業法に基づく許可が必要: ゲストハウスの場合は、宿泊業法に基づく許可が必要になる。
シェアハウス・ゲストハウスへの転用時の注意点
- ターゲット層を明確にする: どのような入居者・利用客を想定するのかを明確にする。
- 周辺環境を調査する: 周辺環境やニーズに合致した物件を選ぶ。
- 法令を遵守する: 消防法や建築基準法などの法令を遵守する。
- 管理・運営体制を構築する: 入居者・利用客とのトラブル対応や清掃などの管理・運営体制を構築する。
- 資金計画を立てる: リノベーションや運営費用などの資金計画を立てる。
- 周辺住民への説明: 周辺住民への説明を行い、理解を得る。
- ゲストハウスの場合は、宿泊業法に基づく許可を取得する: ゲストハウスの場合は、宿泊業法に基づく許可を取得する。
シェアハウス・ゲストハウスへの転用は、空き家問題解決と地域活性化に繋がる可能性を秘めた取り組みです。しかし、メリットだけでなくデメリットも理解し、十分な準備をしてから転用することが重要です。
まとめ
このように空き家問題は重要な社会課題ですが、シェアハウスなどへの転用事例に見られるようにビジネスチャンスも伺えます。地域に貢献したいと考えている事業者さまは、こういった課題への取り組みも検討されてみてはいかがでしょうか。