アニメや漫画は国内外問わず多くの人に愛されており、ときには聖地巡礼などに見られるように関連地域に訪れさせるパワーを持つこともあります。このことから地方自治体は地域活性化施策としてアニメや漫画とコラボすることも少なくありません。この記事では、アニメ・漫画で地域活性化を試みた地方自治体の代表的な事例をまとめて紹介します。
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目次
アニメ・漫画を活用した地方自治体の地域活性化施策例
国土交通省によれば、地方自治体がアニメ・漫画と連携して地域活性化を図るメリットとして以下を挙げています。
- 日本や各地域に対するイメージの向上
- 新規産業の創出による経済効果
- 訪日外国人の増加による国際交流チャンスの増大
アニメ・漫画を活用した地域活性化の施策は大別すると以下のようにまとめられます。
ファン向けのイベントから展示見本市まで、アニメ・漫画関連のイベントが開催されています。今後世情が安定すれば海外からの来場者も増え集客が期待できます。
商店街等のイメージキャラクターから「○○大使」等と呼称され地域のPRなど一定の任を負うものまで、様々な形でキャラクターが活用されています。なかにはサンリオのように各県ごとのご当地ハロー・キティキーホルダーが販売されることもあります。
必ずしも地域外からの誘客に直接的に結びつくものではないですが、アニメ・漫画を活かしたまちづくりの一環と
して、一定程度認知された取り組みとなっています。
アニメや漫画のキャラクターは、鉄道や航空機などの交通機関の車体に描かれ家族連れやファン層に対してアピールすることもあります。各種イベントやキャンペーンの開催にあわせて期間限定で運行されるケースも多いため、より一層、ファン心理に強く訴える結果になっているものと考えられます。
事例1. 水木しげるロード (鳥取県境港市)
鳥取県境港市では「ゲゲゲの鬼太郎」の生みの親、水木しげるさんの出身地であることから「妖怪の町」として「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪ブロンズ像をはじめ、お店も駅も交番、外灯から公園まで妖怪づくしの町全体をテーマパーク化することを目指しているようです。1993年7月の開設以来、27年5カ月ほどで来場者が4千万人を超えたとのことです。
むかし僕が訪れたときは駅や水木しげるロードのあたりのみが妖怪の町で、ちょっとはずれを行くと普通の街並みに戻ってしまっていましたが2018年にリニューアルしてパワーアップしたとのこと。また今度機会を作って行ってみたいと思います。
米子と境港市を繋ぐJR境線ではゲゲゲの鬼太郎列車が走っており場内アナウンスもキャラクターがします。このような地域活性化の取り組みは、行政の補助金に頼らずユニークな企画を連発するなど知恵を絞って情報発信してきた観光関係者のチカラによるものだそうです。
やはり地域活性化は行政だけではなく民間や地域住民の理解と協力があってこそ効果を最大化出来るものだと伺えます。
事例2. 藤子不二雄Ⓐまんがワールド (富山県氷見市)
先に紹介した鳥取県境港市のゲゲゲの鬼太郎と似た事例として、富山県氷見市は藤子A不二雄さんの生まれ故郷であることから忍者ハットリくんや笑うセールスマンなどが街中の至る所に現れます。
また、こちらもJR氷見線で忍者ハットリくんの電車、ハットリくんの社内アナウンスを楽しむことができます。
氷見では寒ブリも有名なのでグルメも合わせて楽しむことができます。
僕が以前氷見に足を運んだ際には道の駅「氷見一番屋街」のお店でブリを頂きました。とてもおいしかったです。
事例3. 鳥取砂丘コナン空港 (鳥取県鳥取市)
鳥取空港では利用促進を目的として愛称化推進キャンペーンを行い、その結果『鳥取砂丘コナン空港』と名称が決まりました。名探偵コナンの作者である青山剛昌さんが鳥取県出身であり、全国的にも知名度のある長寿作品であることからコナンに決まったようです。
空港の至る所にコナンのキャラクターが居たり、コナンの関連イベントを開催するなどしてファンが楽しめる施設となっています。
2016年時点で、北栄町にある青山剛昌ふるさと館も昨年度の入館者が前年度から約2万8千人増え、初めて年間入場者が10万人を突破しました。同館の近くにあるJR山陰線由良駅を利用したJR西日本の「コナンミステリーツアー」の開催した影響もあったとのことで、コナンによる観光施設・イベント・プロモーションをうまく実施した成功事例であると言えましょう。
事例4. ガールズ&パンツァー聖地巡礼支援 (茨城県大洗市)
大洗町が舞台となったアニメ「ガールズ&パンツァー(ガルパン)」が人気となり、聖地巡礼としてアニメの舞台になった場所を訪れる観光客が一時期激増しました。
野村総研によると、2013年~2014年にかけてのガルパンによる経済効果は7億円とのこと。万年赤字の鹿島臨海鉄道が黒字化するなど地域にとって嬉しい効果が得られました。
これを受け、大洗観光協会ではスタンプラリーの開催やアートギャラリー施設の開始、イベント開催などを行いガルパンファンを取り込みました。
事例5. ワンピース熊本復興プロジェクト (熊本県)
2016年4月に発生した熊本地震。熊本城が崩れるなど大きな被害を受けたことは記憶に新しいです。地震直後、熊本県出身の漫画家・尾田栄一郎さんが支援を表明。
熊本県内でスタンプラリーやラッピング列車といった復興プロジェクトが実施やワンピースと連携した様々なイベントの開催、地域住民への支援などが行われました。
そして熊本県の各地にワンピースキャラクターの銅像が立ちました。尚絅大学(熊本市)の研究チームは、最初に県庁に置かれたルフィ像だけで、2019年に5万5000人が来訪したと推計、宿泊や飲食、広告といった経済効果は26億円に上ったと試算しています。
災害復興支援という大義名分とワンピースという知名度のある作品の組合せにより大きな経済効果を得ています。
事例6. ゴールデンカムイARスタンプラリー (北海道)
北海道が舞台となったアニメ・漫画「ゴールデンカムイ」のARスタンプラリーを北海道で開催しました。
このスタンプラリーが話題になったのは何と言ってもスタンプの設置場所です。
立ち寄るチェックインスポットは札幌、小樽、旭川、日高、空知、道東エリアの網走、弟子屈、釧路、阿寒湖に点在しています。全てのスポットを順に直線で結んでも800kmを超えるようです。
地図上では一見近そうに見える札幌から夕張までは約60~70km、札幌から旭川までは約130kmあります。道東の網走や釧路、弟子屈、阿寒湖に至っては、いずれも札幌から300km以上あります。
完走できる人が居るのかは謎ですが、それくらい難易度の高い方が燃える人も居るかもしれませんね。小さな区域ですぐに全部スタンプを押せるのも良いですが、日本100名城スタンプラリーや本事例のように長期間旅行の楽しみを兼ねて実施するスタンプラリーも良いと思います。
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まとめ
今回は有名な成功事例を取り上げましたが、このほかにも様々な地域で様々なアニメ・漫画と連携して地域活性化イベントが実施されています。その中でも中々うまくいかない事例も少なくなくありません。
今後は成功する要因、失敗する要因についても分析していずれ記事にしたいと思います。