「ソーシャルビジネス」とは、ビジネスの活動を通じて社会問題の解決を目指す取り組みのことです。ビジネスで利益を生む一方で、社会課題や地域の問題に対する解決策を提供することが特徴です。日本で言う三方良しを体現したビジネスと言えましょう。この記事ではユニークなソーシャルビジネスの事例を紹介します。
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目次
ソーシャルビジネスとは?
「ソーシャルビジネス」とは、ビジネスの活動を通じて社会問題の解決を目指す取り組みのことです。ビジネスで利益を生む一方で、社会課題や地域の問題に対する解決策を提供することが特徴となります。
2008年4月に経済産業省が発表したソーシャルビジネス研究会報告書の中の「ソーシャルビジネスの定義」によると、ソーシャルビジネスの原則は次の3点です。
社会性
社会に今ある問題の改善を、事業活動の理念とすること
事業性
ビジネスとして社会問題解決に取り組み、事業経営を継続させること
革新性
商品やサービスを新しく創り出したり、それらを社会に提供するための新しい仕組みを開発すること
事業の拡散を通し、新しい社会的価値を提供すること
これらの特徴をもとに、多くの企業がソーシャルビジネスに取り組み、社会にポジティブな影響を与えています。
ソーシャルビジネスが注目される背景
社会問題とソーシャルビジネスの関連性は、近年ますます深まっています。環境問題や貧困、社会的排除など、様々な課題が存在する現代社会において、ビジネスによる解決策が求められています。ここで注目されるのがソーシャルビジネスです。
また、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)とソーシャルビジネスの関係性も深いです。SDGsの17の目標と169のターゲットは、全てが社会課題の解決を目指しており、これらの達成に向けてソーシャルビジネスが重要な役割を果たせると考えられています。
今後、より多くの企業がソーシャルビジネスに取り組み、社会課題解決に繋がることで、持続可能な社会作りに貢献することが期待されています。
社会問題 | ソーシャルビジネスでの取り組み |
---|---|
環境問題 | 環境に優しい商品・サービスの開発 |
貧困 | 雇用創出や教育支援など |
社会的排除 | 多様性の尊重、インクルージョンの推進 |
ソーシャルビジネスにおける課題と対策
現状では、ソーシャルビジネスが抱える課題の一つとして、「事業継続性」が挙げられます。社会的な貢献を重視する一方で、経済的な安定も求められるため、バランスを保つことが難しいのです。
また、一部のソーシャルビジネスでは、「スケールアップ」が課題となっています。社会課題解決の取り組みを拡大するには、投資や人材育成など多くの資源が必要となります。
これらの課題を解決するための対策としては、「パートナーシップの強化」や「人材育成」が考えられます。企業間の連携や地域との協力を図ることで、より大きな社会貢献を実現することが可能です。また、ソーシャルビジネスに理解を深め、専門知識を持った人材を育成することも重要となります。
ユニークなソーシャルビジネス事例5選
事例1:Kuradashi
引用:『Kuradashi』
Kuradashiは、本来廃棄されてしまうような商品を仕入れ、お得な価格でユーザーへ販売し、売り上げの一部で社会貢献活動を支援するソーシャルマーケットです。日本は世界有数のフードロス大国。年間522万トン以上の食料が廃棄されていますがKuradashiは2030年までにこの数値を半減させることを目標に活動しています。日本のSDGsでもフードロスは重点課題として取り扱われており、まさに社会課題を事業で解決するサービスであると言えます。
事例2: Ecosia
引用:『Ecosia』
ECOSIAはドイツ発の検索エンジンです。ECOSIAはGoogleやYahooと同じように広告収入型のビジネスモデルですが、その収益を地球の未来を守るために使っています。具体的には利益の約80%を世界中の植樹プロジェクトに使っています。つまり、ECOSIAで検索するだけで世界中の植樹に貢献することになるのです。だいたい50回の検索で1本の植林に繋がると言われています。
また、ECOSIAでは検索に使用されるエネルギーの2倍量を生み出すことができる太陽光のシステムを導入しており、検索に使用されるエネルギーを全て太陽光システムで賄っているとのことです。
Google ChromeやMicrosoft Edgeの拡張プラグインとしてインストールするだけで使用できます。画面右上の木のアイコン箇所では、自分たちの検索によってどれくらい植林されたかが分かるようになっています。
事例3: サンゴに優しい日焼け止め
引用:『アイシスオーガニック生活便』
沖縄出身の方が作った「サンゴに優しい日焼け止め」は名前の通りサンゴに優しい日焼け止めです(笑)
日焼け止めには通常はサンゴを死なせてしまう化学物質(オキシベンゾンやメトキシケイヒ酸エチルヘキシル)が含まれています。特にオキシべンゾンは62ppt(オリンピック競技用プール6個半中の水滴1滴に相当)の低濃度まで希釈された場合でも、サンゴへの有害性が科学的に実証されているとのことです。ハワイではこれらの有害成分を含む日焼け止めの販売を禁止する法案が可決されました。
そういった背景から、紫外線をブロックする酸化亜鉛を主成分にヒマワリ種子油など保湿成分のある自然由来成分を配合した本製品が開発されました。本製品の売上の一部はサンゴの移植活動や海の保全活動のために寄付されます。
使うことで海を守れる素敵な商品だと思います。海で泳ぐときに日焼け止めが必要になったら積極的に使いたいですね。
事例4: ボーダレス・ジャパン
引用:『BORDERLESS』
もはや説明不要というか有名すぎるので今更取り上げてもな……と思いつつ結局取り上げることにしました(笑)
ボーダレス・ジャパンは、「ソーシャル・ビジネスで世界を変える」ことを目指し、社会起業家が集うプラットフォームカンパニーです。”ソーシャルビジネスしかやらない会社”であり、13ヶ国で49事業を展開しています。CO2排出量ゼロのハチドリ電力などもボーダレス系列の会社です。
ソーシャルビジネスを考える上ではベンチマーク必須の会社と言えるのではないでしょうか。この会社に関してはまた別の機会に集中的に取り上げたいと思います。
事例5: LITALICO
引用:『LITALICO』
LITALICOは障害のない社会をつくることをビジョンとして設定しており、発達障害の子供の支援、発達障害を持つ大人の就職支援などをしています。また、障害福祉で働きたい人向けの情報・就職サイトも展開しておりまさにビジョンに基づく事業展開をしています。
何となくこういった事業は利益になりにくくNPOがやっているイメージを持ちがちですが、LITACOは株式会社として事業を実施しています。利益を自助的に確保することで持続的な活動をすることができ、まさに事業で社会課題を解決することを体現していると言えます。
まとめ
本記事では、ユニークなソーシャルビジネスの事例を5つ取り上げ、その企業概要、取り組み、成果について詳しく解説しました。それぞれの事例が示すように、ソーシャルビジネスには多様な形がありますが、その中心には常に社会課題解決の思いが存在しています。
社会課題の解決が利益に繋がる流れを強くすることで、社会もより良いものになっていくと思います。僕も中小企業診断士としてそういうことを念頭に置いて活動をしてまいります。