ここ数年、テレワークが推進され都内の会社に務めながらも必ずしも都内に住む必要がなくなってきました。その影響もありワーケーションという考え方が浸透しつつあります。地域活性化を考える地方自治体にとってワーケーションをしたい人を取り込む施策は重要です。この記事ではワーケーションで目立った取り組みをしている地方自治体の事例をまとめました。
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参考文献:『ワーケーション企画入門』
目次
ワーケーションとは
ワーケーションとは、ワーク(働く)とバケーション(観光)を組み合わせた造語です。観光庁ではワーケーションをテレワーク等を活用し、リゾート地や温泉地、国立公園等、普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみつつ仕事を行うことと定義しています。
従来の旅行スタイルは、特定の時期に一斉に休暇取得したり宿泊日数が短いといった特徴があり、旅行需要が特定の時期や場所に集中しやすい傾向にありました。
最近ではテレワークの浸透により場所にとらわれない柔軟な働き方が可能になりつつあります。働き手が職場や自宅を離れ、仕事もしながら余暇も過ごせるようになることで、日常にない気付きや学び、交流が得られ、新たな価値創出や地域・社会の課題に取り組むなどのきっかけとなるといった効果も出てきています。
以上を踏まえて観光庁ではワーケーションを「新たな旅のスタイル」と位置づけ、その普及を促進しています。
ワーケーションを行うメリットは以下が挙げられます。
・企業(送り手側)
・仕事の質の向上、イノベーションの創出
・帰属意識の向上
・人材の確保、人材流出の抑止
・有給休暇の取得促進
・CSR、SDGsの取組みによる企業価値の向上
・地域との関係性構築によるBCP対策
・地方創生への寄与
・働き方の選択肢の増加
・ストレス軽減やリフレッシュ効果
・モチベーションの向上
・リモートワークの促進
・長期休暇が取得しやすくなる
・新たな出会いやアイデアの創出
・業務効率の向上
・平日の旅行需要の創出
・交流人口および関係人口の増加
・関連事業の活性化、雇用創出
・企業との関係性構築
・遊休施設等の有効活用
・事業拡大および雇用創出
・受入地域(行政)との関係性向上
・自社のソリューション開発
参考:『観光庁』
事例1. 和歌山県
和歌山県はワーケーションに先進的に取り組み、日本型ワーケーションを発明したと言っても過言ではない県です。
もともと和歌山県はビーチや温泉などで有名な白浜、世界文化遺産の熊野古道などの観光資源がありますが訪問客の多くが関西圏からの日帰りで、時期も夏に集中していました。
そこで県はIT企業のサテライトオフィス誘致を積極的に行い、2017年からは観光を組み合わせたワーケーションのためのモニターツアーや実証実験を行い100社以上がワーケーションを体験したとのことです。
プロモーション動画を制作、ワーケーションを仲介するコンシェルジュの設置などのワーケーション誘致施策を和歌山県はいち早く取り入れ先行者利益を獲得しました。
事例2. 沖縄県
沖縄県ワーケーション促進事業では、文化観光スポーツ部を中止にウェルネス・ワーケーション、チームビルディング・ワーケーションの2つの方向性を示しました。
さらに地域ごとにモデルを作りました。那覇の「オン・オフバランス型」、南部の「のんびりリラックス型」、中部の「文化刺激型」、北部の「ネイチャーリフレッシュ型」、宮古の「マリンリゾート型」、八重山の「自然体験方小型」の6つのモデルです。
那覇エリア+慶良間諸島「オン・オフバランス型」
都市機能と首里・琉球文化が融合した那覇エリアでは、仕事の合間に首里を散策したり、首里の伝統工芸体験をするなど、オンとオフのバランスを取りながらのワーケーションが可能。
南部エリア 「のんびりリラックス型」
自然と土地の文化が融合した南部エリアでは、のどかな 風景の中、のんびりリラックスしながらのワーケーションが可能。
中部エリア「文化刺激型」
多様な文化が融合した中部エリアでは、グスクや集落などの歴史文化から、工芸文化、異国情緒溢れる多国籍文化まで、沖縄の“チャンプルー(ごちゃ混ぜ)”なカルチャー体験が可能
北部エリア 「ネイチャーリフレッシュ型」
自然豊かなやんばるの森や、長寿文化が息づく北部エリアでは、 リフレッシュしながら、すっきりと集中して仕事をすることが可能。
宮古エリア「マリンリゾート型」
沖縄の代名詞とも言える青い海で有名な宮古エリアでは、目の前に海を感じる解放的かつ非日常 空間の中、フレッシュな気持ちで仕事に取り組むことができる。
八重山エリア「自然体験宝庫型」
星空保護区にも指定されている、豊かな自然を有する八重山エリアでは、島ごとの特色を活かしたバリエーション豊かな「自然体験」を楽しむことが可能。
沖縄県のワーケーションは、来訪者に長期滞在を促し観光の高付加価値化を目指す側面が強いため、ワークスタイルやライフスタイルの提案にまでは至っていないのが現状です。
事例3. 北海道
北海道では北海道全域を対象としたワーケーションのポータルサイトがありますが、釧路、帯広、網走、北見などの自治体を中心とした道東のワーケーションが注目されています。
道東のワーケーションの特徴はDMOがネットワークのハブ的な役割を担っていることです。2018年に設立された「ひがし北海道自然美への道DMO」は地域連携DMOとして東北海道の行政と観光関連事業者をつなぎ、観光視点から「ひがし北海道ワーケーションネットワーク」を構築しています。
また観光マネジメントやマーケティングだけではなく「ひがし北海道観光寺子屋」を立ち上げ、さまざまな領域の人を対象にした活動をしています。
事例4. 鳥取県
鳥取県はワーケーション実施企業支援事業費補助金、ワーケーションプログラム造成事業費h除菌、ワーケーション拠点整備事業費補助金などによる支援のほかワーケーション・コンシェルジュの設置、鳥取までの航空賃を助成する鳥取県国内便エアサポートなど、さまざまなワーケーション推進施策をしてきました。
地方での副業や交流、家族ぐるみの滞在など都市部のワーカーが抱くニーズを意識した環境づくりを進めています。
事例5. 長野県
長野県は東京からの距離感をいかしたテレワークによるワークスタイルを「信州リゾートテレワーク」と銘打ってきました。取り組みの中心は産業労働部産業立地・IT振興課で観光の要素を含みつつ企業のイノベーションや人材確保・育成、従業員のウェルビーイングやクリエイティビティの向上などに主眼を置いた施策の展開が特徴です。
長野県による「信州リゾートテレワーク」は、各地域の取り組みを包括的に支援するものであり、それぞれの地域、施設が共感できる枠組みの整備やネットワーク化への意識をつくる良いブランディングであると言えます。
まとめ
地域活性化を考えるうえでワーケーションは重要施策の1つであり、ワーケーションをしたい人にとって魅力的な環境を整えることも大切です。このような施策をするためにも自治体の保有資源や強み、魅力を棚卸ししてプロモーションも合わせて行う必要があります。
ワーケーション企画をしたい地方自治体の方はぜひお気軽にご相談ください。中小企業診断士業やWebマーケティング会社勤務ので培った験と人脈を生かして全力でサポートいたします。